ラインの報告を受けてオルテア小国に向かったリィたちだったが、そこにいたラインとは、リィとレイジスの友人アリスだった。
リィたちはアリスと戦うことになり、勝利する。
最終的にはアリスを説得し、仲間に加えることになった。
そして舞台は彼女を仲間に加えたその夜。
ゼノンは宿の外で独り煙草を吹かしている。
そんな中、偶然宿から出てきたアリスと鉢合わせる。
Links 幕間第3.5話 ―過去を負う者―
ラインの報告を受けてオルテア小国に向かったリィたちだったが、そこにいたラインとは、リィとレイジスの友人アリスだった。
リィたちはアリスと戦うことになり、勝利する。
最終的にはアリスを説得し、仲間に加えることになった。
そして舞台は彼女を仲間に加えたその夜。
ゼノンは宿の外で独り煙草を吹かしている。
そんな中、偶然宿から出てきたアリスと鉢合わせる。



…(煙草をふかす)





…。





こんな時間にどうした? 子供は寝る時間だぜ。





ただ夜風をあたりに来ただけです。
ちなみに私はあなたより長く生きてますよ。
ところでゼノンさん。あなたこそこんな夜更けに何をしてるんです?





俺はどこかのラインに寝首を掻かれないようにしてるだけだ。





ははー、それはそれは気を付けないといけないですねぇ。





ラインがわざわざ人間みたいに振る舞いやがって…。何が目的だ。





別に何も。





そんな訳ねえだろうが。





何故です?





何故?
それはラインのお前が一番分かってるんじゃないのか?
ラインは人を殺し、国を潰す。
まるで世界を支配しようとしてるみたいじゃねえか。





…そんなことはないです。





証拠はあるのかよ。





…無いですけど。





ほら見たことか。ラインの言葉なんて信じられるか。





ライン、ラインって…。随分と嫌ってるようですね。





当たり前だ。お前らは――





あなたの祖国を滅ぼしたこと、お兄さんを殺したことを恨んでるんですか?





っ!? …貴様ッ!


ゼノン、剣をアリスの首元につける



おや、図星ということですかね?
もしかしたらと思いましたが、やっぱりあなたは――
あいたたた、ゼノンさん、本気で私を殺すつもりですね?





今から俺の質問にだけ答えろ。
余計な口を開くな。…最初の質問だ。何故その事を知っている?





何故? 大体検討はついているんじゃないですか?





無駄口を叩くな!
やはりお前が俺たちの国を滅ぼしたラインなのか! 言え!





正確には違います。私が参加した戦いは、まだあなたの国が力を持っていた時。主力部隊を潰した一回だけです。





それでも俺たちの国を滅ぼす片棒を担いだことには変わらない!





…そうですね。その通りです。返す言葉もありません。





なら、何故人間の姿で現れ、レイジスたちに協力している?





…っ。





その首が落ちてもいいのか?





それは…、私がラインの生き方に疑問を持ったからです。





どういう事だ。





…ラインは人間を妬み、嫌い、殺す。
昔からそう教えられてきました。
だから私はその通りに生きてきた。
憎むべき人間を倒すために戦闘技術を教え込まれ、そして人間を襲った。
一人で人間を襲うときもあれば、大規模のラインを率いて国を攻めたこともありました。





その中の一つに俺の国があったということか…。くそっ。





…ある時、私は人間の世界に潜伏し、私たちラインの脅威となる人間の暗殺を見届ける役を命じられました。
もし暗殺を邪魔する者が現れたら陰で排除する。それが私の仕事でした。





…。





人間の世界に潜入した時、仲良くなった女の子がいました。
その子はとても元気で、明るい素直な子だった。
でも私は人間ではなくライン。
人間との関わりは任務の一環だと思い、接してきました。ですが…。





知らないうちに情が湧いた、と。





長い間人間社会で過ごしている内に、私が教えられてきた人間像とは違っていたことに気が付いたんです。
人間は言葉を話し、笑い泣く、そして心を持っている。私たちラインと何ら変わらなかった…。





…続けろ。





その女の子には本当に振り回されました…。
自分の都合で私を買い物に同行させたり、学校が休みの日も暇だからといって私を連れまわしました…。
自分勝手で強引で…。でも、不思議と嫌じゃなかった。
それどころか、心の底で楽しいとさえ思ってました。





…ふん。





その女の子は私の事を親友だと言ってくれました。
信じられますか? 正体も、本音も、感情も隠した私のことを親友だと言ってくれたんですよ。
でも…。





お前はライン。任務があった。そしてその暗殺すべき相手は――





はい…その子の両親でした。





…っ。





私を親友と呼んでくれたその女の子が、
両親の死体に縋り付き、泣き叫ぶ姿を見て、自分たちがしてしまったことの重大さに気づきました。
そして分からなくなりました。





…そうか。





…ねえ、ゼノンさん。ラインってなんですか?
人間ってなんですか? その違いはなんなんですか?





…姿から違うだろう。





見た目に拘るのであれば、些細なものではありますが人間も地域によって違うはずです。
目の色、肌の色、時には言語だって違うとも聞きました。





でもお前らは俺たち人間を襲う。





人間は人間を襲わないんですか?





…それは。





…私は、分からないです。





…ちっ!


ゼノン、剣を収める



斬らないのですか?





斬ってほしいのか?





私は、あなたに斬られても、あの子に殺されても文句は言えないことをしてますから。





何を今更。…もし、俺が斬らないと言ったら?





そうですね。あなたが何と言おうと彼女と共に旅を続けます。





それは償いか。





親友として、です。





そうか…好きにしろ。
だが俺はアンタを許したわけじゃない。それだけは忘れるな。





…忘れることなんてできません。今も…これからも、一生――。


to be continued...
