目が覚めると、私は暗い森の中に居た。
空には、青白く光る大きな満月が不気味に私を見下ろしている。



いったい、ここはどこなのでしょう。


目が覚めると、私は暗い森の中に居た。
空には、青白く光る大きな満月が不気味に私を見下ろしている。



どこかに、山小屋のようなものがあればいいのですが……。


辺りを見渡してみると、遠くに明かりが見えた。



とにかく、あそこまで行ってみましょう。


私は、ひとまず明かりのある所まで歩くことにした。
暗い森は、月明かりで照らされているものの、見通しが悪く、ひと気も全く無い。ただ、サクサクと落ち葉を踏む、私の足音だけが、その森に響いていた。



やっと、着きました。


私が目指していた明かりの正体は、森の中に突如として現れた、大きな洋館の明かりだった。
私は、目の前にある大きな扉を叩いた。



あの、すみません。


私が扉のドアを叩くと、少しして、中から返事が聞こえた。



おやおや、こんな夜遅くに、お一人でどうされたのですか?


ドアを開けてくれたのは、背の高い、御伽噺に出てくる王子様のような人でした。



あ、あの、私、森で迷ってしまって、それで、あの……、一晩だけ泊めてもらえませんか?





落ち着いてください。
それに、外は寒いですよ。ひとまず、中にお入りください。
話はそれからです。


事情を説明すると、その人は、私を快く迎えてくれた。
案内された部屋は広く、大きく長いテーブルの上に、既に食事の用意がされていた。



あ、あの……。
お食事中に押しかけて、すみませんでした。





いやいや、まだ食べる前だったんだよ。
それに、まだ全員揃っていないからね。
そうだ。お腹はすいていないかい?
君の分も用意させるよ?





い、いえ。それは……。


そのとき、私のお腹が鳴ってしまった。



うん。お腹は正直だね。





す、すみません……。


彼は微笑み、近くにあった呼び出し用のベルを鳴らせた。



は、はい。お呼びでしょうか。


すぐに来たのは、メイドの格好をした少女だった。



ああ、もう一人分、食事を用意してくれるかい?
彼女の分だ。





あ、お客様でしたか。わかりました。お座りになって少々お待ちください。


そう言うと、彼女は一礼し、部屋を出て行った。



そういえば、名前を言っていなかったね。
私の名前は、アーサー。この土地をある人の言い付けで任されている者だよ。


アーサーと名乗った彼は、私に微笑んだ。



あ、私は、私の名前は……。


どうしてだろう。名前が思い出せない。
私は、森に入る前……。
あれ? 森で目が覚める前の記憶が思い出せない。



やはり思い出せないのですね?





え?
は、はい……。
あの、いったいここはどこなのでしょうか。
この森のことも全く知らなくて……。





では、食事をしながら話しましょう。
そろそろ料理が出来上がるころです。


アーサーは、私に微笑み、アーサーの隣の席に誘導してくれた。
すると、部屋の扉が開き、さっきのメイドの少女が料理を持って部屋に入ってきた。
