文化祭当日はそこそこの来場数のようだった。

近隣の学校や家族連れが訪れて、クラスごとの企画を覗き、部活の成果を見学していった。

僕らの教室を覗いた客は机さえ移動されておらず、荷物置き場と化している状況に首を傾げた後、黒板や入口付近のポスターを見て納得したように廊下へと戻っていった。

そこには音楽室でピアノコンサートをやる旨とその時間が軽快なポップに記されており、ポスターとしての役割を十二分に発揮していた。

作ったのは僕だけど、あまりにも可もなく不可もなくな出来で、僕のひととなりをよく表していた。

当の僕と布川は相変わらずの二人きりで文化祭を回っていた。

お化け屋敷の生徒扮する貞子に悲鳴を上げたのは僕で、たこ焼きをおごったのも僕だった。

彼女は緊張のためか、あまり熱中できていないみたいだった。

緊張というより、それはどちらかと言えば恐怖だったのかもしれない。

布川はたこ焼きを爪楊枝で解しながら僕を見上げていた。

猫舌らしい。

そもそも自作曲だし。

あるかもしれないけど。

確かに彼女の演奏は独創的すぎる。

そもそも本来なら観客がきちんと集まるかも微妙なところだ。

幸いにして音楽室での演目のトリだから、観客が一斉にハケるということさえなければ、何人かはそのまま残って聞いてくれるはず。

あまりに文化祭に向けた準備に忙殺されて忘れかけていたけれど、そういえばそれは布川の演奏を多くの人に認めさせることだった。

愛されてんな僕。

それ自体は嬉し恥ずかしなことだけれど、いつのまにか彼女の重荷になってしまっていたのは僕としても不本意だった。

だからといって咄嗟に気の利いたことも言えず、それが心からの望みだったのだと自分にも彼女にも気付かせてしまう。

その言葉を吐いて笑ってみせたのは、僕ではなかった。