それを口にした途端、アルマは力なく宙に舞った。受け身も取れず床に叩きつけられ、そのまま蹲るアルマに、俺は駆け寄った。
それを口にした途端、アルマは力なく宙に舞った。受け身も取れず床に叩きつけられ、そのまま蹲るアルマに、俺は駆け寄った。



アルマ!!





お前は阿呆か!何を考えている!!


声を張り上げた男ーーアルマの父であり、スカイラインの王であるロディは、そんな俺を押しのけ、アルマの髪を掴んで顔を上げさせた。



他の騎士候補はどうした?





みんな…僕よりも弱い…それにあいつら、出世ばかり考えて、国のことなんか何も考えてない…!父さんには分からないの!?





それを鍛え上げ、従えるのが王たる者の器量だ…それともなんだ?お前にはそれが出来ないのか?





っ………





………とにかく、そんな家柄もわからぬ、しかも魔族に、騎士は任せられん…私は認めんぞ


ロディは鋭く俺を睨むと部屋から出て行った。アルマは無理やり上げられていた顔を伏せ、項垂れているようだった。



アルマ…ごめん…





……………





俺……その…





………はぁ…こんな所でウジウジしてても、何も変わらないよね…





シルフ


アルマは俺の両肩に手を置き、ニッと笑って見せた。



心配しないで。何としても、僕が君を認めさせるから…絶対…絶対に…!!





ゼェ……ゼェ……





大丈夫、シルフ?


正直なんというか…だめだ。体力には自信あると思ったんだがな…



うーん…ちょっとハードすぎたかなぁ





ごめん、アルマ…俺…





気にしないで!最初なんてみんなそんなもんだよ!!それに、戦う以外にも道はあるし…ほら、頭脳戦とか!





騎士なんだから、守れなきゃ意味ないだろ…もう一回頼む





うん…無茶しないでね?疲れたらちゃんと言うんだよ?





分かってるよ


なんとか笑を作り、アルマと向き合う…こんな基礎的なことで音をあげていちゃ、この先やってけない…



これは、王子。ゴキゲン麗しゅう


よく通る男の声がした。と、俺の体が無理やり押しのけられ、思わず尻餅をついてしまった。



うわ!?





シルフ!!


アルマが心配して駆け寄ろうとするが、その前に赤い帽子を被った天族が立ちふさがる…こいつ…



ちょっと…どいてください!





うん?……おや、もしや…ソレが王子が連れてきたという新たな騎士候補でしょうか


赤帽子が、チラと俺の方を見る…蔑むような光を宿したその目は、今まで俺が見てきた貴族たちのモノと同じだった。



いや、失礼致しました…私、醜いものは目に映りにくい体質のようで…





シルフは醜くなんか…!!





それに…何ですか、この体たらくは。王子、本当にこんなやからに騎士が務まるとお思いで?





今は……そうでも、でも、シルフは絶対強くなる!少なくとも、力と権力しか目に見えていないあなたよりは!!


待てアルマ、それは…!!



………ほう?


赤帽子は、途端に俺から興味を逸らし、その標的をアルマに移した。萎縮してしまいそうなほど鋭いその眼光に、しかしアルマは微動だにしなかった。



それは…いつかはあなたよりも強くなる…と?





ええ。それはもちろん…誰よりも強くなれますよ、彼なら…


アルマが言い放つと、赤帽子は軽く鼻を鳴らして笑った…おいおい…これマズイって…



なら…試してみましょうか?





試す?





1ヵ月後、ソレと私とでデュエルを開催します。ソレがもし、万が一私に勝てたら…ロディ様の説得に、私も力を貸しましょう





父さんの…?





ええ。私は…あなたが提示した条件をただ1人クリアした候補です。そのため、ロディ様に言われ、あなた方を挑発しに来たのですが…その様子だと読み通りなようですね?


それはつまり…アルマより強い…アルマを負かしたってことか…?基礎鍛錬のみでくたくたになってる様じゃ、とても敵わないんじゃ…



なるほど…父さんの引き金か…





……僕はぜひともってところだけど…シルフ、どうする?





…俺は…


正直、勝算は見いだせない…このままじゃ、だめだ。でも、これを逃したら、誰にも認めてもらえない…アルマを守れない…!



……やる。騎士にならなきゃ、俺がアルマに助けられた意味がない





シルフ…!





ふふっ、無謀ですね…しかし、嫌いではありません…たかが1ヶ月で何が出来るのか…楽しみにしていますよ


赤帽子は、口元に笑みを浮かべて去って行った。さて…これからどうしたものか………そういえば…



はは…言っちゃったね……時間は少ないけど、とりあえず今日はちょっと休んでーー





アルマ、あの…





うん?


あのデブ公爵…あいつが言っていたことが本当なら…もしそうだとして、アイツに、本当に見る目があったのなら……!



魔法、使えるか…?もし使えるんなら、教えてくれ


