ヤムカ

ほっ、ホントにやんのかよ!? 軍属魔法師を襲撃なんて・・・

コペ

大丈夫、勝てば官軍って奴!

ヤムカ

向こうはリアルに官軍なんだよ!

ベシワク

今暴れても、あとでジャハを解放すれば罪にはならない。

ヤムカ

なるからな!? だいたいその理屈、解放できなかった場合はどうなんだ?

コペ

負ければ賊軍! さあ行くよ!

ヤムカ

さあ行くよ、じゃねえ! ああもう、こうなりゃヤケだ!!

ジャハの壁のすぐ手前にある一般家屋。
その一室が、軍属魔法師たちの臨時の職場になっていた。
僕たちはその部屋に突入した。

なっ、何者だ!

グージィ

このヘヤにゴニン、オクのヘヤにゴニンです!

ベシワク

援軍が来る前に倒そう。ヤムカは左半分を!

ヤムカ

確かなる者、導く者よ、
うつろを満たし駆動せよ!
──操人形〈マリオネット〉!!

うわあああっ!?

奇襲が成功し、部屋にいた五人はろくな抵抗もなく倒れた。
隣の部屋から残りの魔法師たちが駆けつける。

魔風斧〈ウィングラックス〉!

魔氷槍〈アイスランス〉!

火炎球〈フレイム〉!

魔法師たちがヤムカの戦闘用人形を攻撃する。だけど人形はびくともしない。

ダグラス

氷結界〈グラキエス〉!

一人の魔法師が、剣を抜いた。
そして氷魔法で僕の足元を固め、飛びかかってきた。

僕は剣で受けたが・・・速い! 一瞬遅ければ斬られていた。

ダグラス

ほう、受けたか。見かけによらず力があるな!

ベシワク

あなたこそ。魔法師が剣を使うと思わなかった。

ダグラス

俺はダグラス、魔法剣士だ。魔法師は詠唱時間が無防備になるからな。軍の魔法師部隊には、物理戦の得意な奴が一人はいるんだよ。

ベシワク

その説明してる間に詠唱すべきでは?

ダグラス

この説明しなきゃどうにも中途半端呼ばわりされるもんでな。

複雑な思いがあるらしい。

ダグラス

もう多芸で無芸とは呼ばせない! 食らえ、これが魔法師の斬撃だ!!

鋭い一閃がひらめき、僕の剣が弾き飛ばされた。
しかし刃が振り下ろされる直前、魔法剣士の体は、力が抜けたように崩れ落ちた。

ダグラス

くかー・・・

眠り魔法!? みんな気をつけろ、もう一人隠れて――

コペ

――眠り〈ソムニア〉

仲間に警告しようとした魔法師は、最後まで言えずに倒れた。

敵が全員床に沈んだところで、じわりと、何もない空間からコペの姿が現れた。

コペ

やぁやぁ我こそはコートン山地一の魔法師、眠り魔法のコペ!

ベシワク

そんな二つ名が?

コペ

みたいな口上をやりたかったのに、誰も聞いてない!

ベシワク

君が眠らせたからね。危ないところだった、助かったよ。

コペ

ベシワクの作戦がよかったんだよ。透過魔法を使いながら同時に眠り攻撃、意外とできるもんだねえ。

ベシワク

僕のアイデアじゃないけどね。

前に戦った盗賊たちが使っていた作戦のアレンジだ。
あの盗賊たち、無事に山を下りられただろうか。

コペ

荒らかなる者、くるめく者よ、
勇気と力もたらす者よ、
石の硬きもやがてはひずむ、
時のかなたに残るはしずく。
――氷融解〈リキシムス〉

コペの呪文で、僕の足を固めていた氷が溶けて消えた。

ベシワク

ありがとう。

コペ

どういたしまして。ところで、ジャハが見えるのはこの窓だよね?
・・・うん、結界、なくなってるよ!

ヤムカ

術者が意識を失って、張り続けられなくなったんだな。暴れた甲斐があったぜ。

ベシワク

よし、今のうちに通ろう!

僕らは部屋をあとにして、ジャハの壁に急いだ。

   
   

──同時刻、ジャハ中央・翠緑の塔──

ルーガル

やあ、リリーシカ。いい部屋だね。

リリーシカ

・・・やあ、ルーガル。何しに来たの?

ルーガル

何しに? そうだな・・・

ルーガル

君と遊びに?